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タイに投資すべきか、すべきでないか?タイへの投資で法的トラブルを回避するための解決策3選

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コロナ禍後、タイへの外国直接投資(FDI)は増加傾向にあり、FDI流入額および投資促進申請額は前年に比べ36%増加(約130億米ドル)。[1] それに伴い、タイの国内総生産(GDP)は2022年の2.6%から、2023年には最高値の3.7%になると予測されています。[2]

タイ政府によると、昨年のタイへの外国投資は、日本、シンガポール、米国、台湾、香港、中国が上位を占めています。[3] 投資委員会(BOI)の記録によると、2022年の成長率が最も高い分野は、エレクトロニクス、EV・自動車、デジタルでした。

東南アジアの地理的な位置、熟練した労働力、投資委員会のインセンティブ、外国人向けの長期居住ビザの導入など、タイが外国投資にとって魅力的な場所である要因は数多くあります。2022年11月、BOIは投資促進のため、免税、新産業カテゴリー、特別投資ゾーンなど、さらなるインセンティブを導入しました。[4]

このような前向きな金融動向や政府の後押しを受けて、外国人投資家のタイへの投資は上向きとなっています。しかしながら、さらなる投資が行われるところには、さらなるリスクや法的問題、紛争の可能性が存在します。本記事では、外国人投資家がタイで頻繁に遭遇する法的・実務的な「問題」の上位を概観し、リスクを最小化または回避する方法を紹介します。

法律問題1:ライセンス、会社設立、契約上の問題

タイの法律では、タイへの投資を希望する外国企業は外国企業法B.E.2542(1999) (FBA)の遵守が必要です。

以下の表は、外国企業の参入が規制されている3つのカテゴリーの簡単な説明と各カテゴリーに属するビジネスの例です。

リスト1 •  禁止されている外国人 所有権[5] 特別な理由により、外国人の参入が禁止されている事業。

:新聞、農業、土地売買

リスト2 • タイ人が保有する株式の40%以上

•  外国人は、内閣の承認を得て商務省の許可を得なければ、事業を営むことができない。

国の安全またはセキュリティに関連する事業、または芸術・文化、伝統、民俗手工芸、天然資源・環境に影響を与える事業。

:国内航空事業、木彫品製造、鉱業

リスト3 •  外国人は、外国人事業委員会の承認を得て、事業開発局長の許可を得なければ、事業を営むことができません。 タイの事業体が競争できる準備が整っていない事業。

:仲介業、商品の小売・卸売および各種サービス業

 

外国人投資家がタイで事業を行うためには、以下のいずれかを取得する必要があります。

    • 外国人ビジネスライセンス(FBL)
    • BOIからの推進活動に関する外国事業証明書(FBC)
    • タイ工業団地公社(IEAT)から認可された事業のためのFBC
    • 米国とタイの友好経済条約(1996年)などの国際条約に基づくFBC

前述の制限に加え、外国人[6] 特定の例外(BOIを通じて投資促進を得た場合など)[7] に該当しない限り、タイでの土地所有は禁止されています。このような制約のもと、タイでのビジネスを希望する外国人投資家は、タイの企業やタイ人と合弁会社(JV)を設立することが一般的です。

タイ企業とのJVを締結する場合、外国人投資家は将来起こりうる問題を回避するために様々な要素を考慮する必要があります。

    • 契約書
      • 外国人投資家は、通常、JV契約の少数株主であるため、その権利を保護するための契約条項が設けられていることの確認が必要です。例えば、意思決定(株主総会や取締役会に必要な定足数、取締役会の議席数、拒否権など)や会社の運営に関する規定は、外国人投資家がJV会社の経営や運営において役割を維持できるように、慎重に作成する必要があります。
      • さらに、将来の紛争解決シナリオを想定し、デッドロック、解約、紛争解決条項に特に注意を払うなど、先見性を発揮することが重要です。
    • 準拠法および紛争解決条項
      • このような条項の起草には、慎重な注意が必要です。契約書に明記された準拠法は、契約に適用される法的枠組みを決定するもので、当事者の権利と義務も含まれています。例えば、株式譲渡制限や株主総会・取締役会に関する規定は、準拠法によって決められます。さらに、外国人投資家は、選択した準拠法が少数株主の利益を適切に保護しているかどうかを慎重に判断する必要があります。
      • 一方、紛争解決条項は、潜在的な紛争を解決するためのメカニズムを決定するものです。外国人投資家は、紛争が発生した場合に、どの紛争解決メカニズム(法廷訴訟、国際仲裁など)が効果的に自分たちの利益を守れるかを慎重に判断しなければなりません。
      • 長くて費用のかかる法的手続を避けるために、準拠法条項と紛争解決条項の整合性を考慮する必要があります。これらの条項の理解が不十分な場合、作成した契約書の内容が抵触してしまい、不本意にも高額で時間のかかる紛争に発展する可能性があります。
    • 定款(AOA)
      • タイ民法・商法に基づき、企業の業務はAOAに記載された条項を遵守する必要があります。[8] したがって、将来の矛盾や複雑さを防ぐために、JV契約の条項を慎重に検討し、AOAと整合させることが重要です。
    • ノミニーを使用する
      • タイの法律では、外国人投資家がタイ人の名義人株主を利用して権益を保有することを厳しく禁じています。[9]
    • 税務上の留意点
      • タイでJVを設立するには、VAT登録、源泉徴収税、特定事業税、法人所得税など、さまざまな税務上の配慮[10]やBOIが提供する税制上の優遇措置の考慮が重要です。

法律問題2:雇用問題

タイは一般に、労働者の保護を優先する国として知られています。解雇(不当解雇)、退職の強要、給与の減額などに関して、従業員と雇用主の間で紛争が生じることも少なくありません。  外国人投資家がタイの企業や個人とJVを設立する場合、従業員との将来ありうるトラブルを避けるために、以下のタイ労働法を知ることが必要です。

    • 解雇
      • タイの労働法では、雇用主は規定されている条件を満たせば、「普通解雇」又は「懲役解雇」の権限を有しています。[11] しかし、実質的な証拠と有効な根拠がない限り、懲役解雇をすることは実務上困難です。法律では、従業員が「故意に職務に従わない」「常習的に職務を怠る」、または「重大な違法行為」を犯したと認められる場合、雇用主は懲役解雇ができると規定されています。[12]その場合、雇用主は解雇通知書に根拠となる正当な解雇理由を明確に記載しますが、後に理由を変更したり追加することはできません。
      • 普通解雇と懲役解雇では、解雇時に従業員に支払わなければならない金額が異なるため、実務上大きな違いがあります。普通解雇の場合、雇用主は未払い賃金や事前通知期間の給与相当の金額の支払い、解雇補償金、未使用の年次休暇、雇用に基づく支払いなどが必要です。[13] 懲役解雇の場合、理論的には、雇用主は予告手当や解雇補償金に代わる金銭を支払う義務はありません。しかし、従業員からの「不当解雇」申し立ての可能性もあるため、解雇の合理的な理由を確実にしておく必要があります。
      • 実際、タイでは解雇された従業員が「不当解雇」を主張することは珍しくなく、特に解雇補償金が十分でない場合や理由なく解雇された場合は、解雇された従業員が「不当解雇」を主張し、裁判を起こす可能性があります。タイ労働裁判所における訴訟の長期化を避けるため、雇用主は早い段階で法的助言を求め、調停や従業員との和解の可能性を検討すべきです。
    • 契約条件の変更
      • タイ労働法では、雇用主が従業員の同意なしに、従業員にとって不利な雇用条件を変更することは禁止されています。[14] これには、労働時間、賃金、福利厚生、年次休暇、労働条件、勤務地に関する規定が含まれます。
    • 契約書の言語
      • タイ労働法では、雇用契約書の作成(無制限雇用契約の場合)や契約書のタイ語使用を義務付けてはいませんが、実務上は作成することが望ましいと言えます。従業員がタイ人で英語を十分に理解できない場合は、契約書をタイ語またはタイ語と英語の二カ国語で作成することが賢明です。これにより、雇用契約の条件を誤解するリスクや、将来起こりうる紛争を最小限に抑えることができます。
    • リモートワーク
      • 今年3月にタイでは労働法を改正し、雇用者と従業員の遠隔地勤務の枠組みを確立する「在宅勤務法案」を提出しました。雇用主と従業員は、従業員が情報技術(IT)を使ってオフィス外で働くことに書面で合意できるようになり、遠隔地の従業員は職場で勤務する従業員と同等の扱いを受けることができます。[15]

上記の考慮点の上に、雇用主は外国人従業員のビザや労働許可証を手配しなければなりません。外国人従業員の労働許可証を申請するためには、会社は以下の要件を満たしている必要があります:

    • ワークパーミット1件につき200万バーツ以上の登録資本金を有すること。
    • 外国人従業員1名に対し、タイ人従業員4名の比率を維持すること。
    • タイで登記されていない会社の場合は、会社の投資資本が300万バーツ以上であることを証明すること。[16]

但し、必要なBOI許可証を持つ外国企業や外交官、タイでの一時的な事業活動に従事する個人、スマートビザを持つ人など、特定の免責事項に該当する外国人従業員は、免除されます。

法律問題3:コンプライアンス問題

プライスウォーターハウスクーパース(PWC)が実施した調査によると、2022年にタイ企業の約4社に1社が詐欺、汚職、その他の経済・金融犯罪を経験しています。[17]また、この調査では、不正リスクに対処するリスク管理およびコンプライアンス機能を確立しているタイ企業はわずか37%であり、世界標準を下回っていることが明らかになりました。タイ企業が遭遇する不正の種類としては、サイバー犯罪、調達詐欺、資産の不正流用などが一般的です。

タイ企業とJVを締結する外国企業も同様の問題に直面しています。外国人投資家においても、機密情報や企業秘密の競合他社への開示、従業員による小口現金の不正使用や会社資金の横領、公務員への贈収賄など、しばしば遭遇する問題です。通常、このような問題は苦情処理や書類審査、内部報告、内部通報窓口・ホットラインなどを通じて明るみに出ます。しかし、多くのタイ企業には適切なリスク管理やコンプライアンス機能がないため、実際の不正行為の発生件数は報告されているよりもさらに多い可能性があります。タイJV企業内のこうした状況は、外国人投資家、特に大規模な多国籍企業にとって、ビジネスや評判に深刻な影響を及ぼす可能性がある問題点です。

外国人投資家は、不正のリスクを軽減するためにタイのJV会社が適切な報告・遵守手続きのガイドラインを確立していることを、確認することが必須です。明確な方針や手順をマネージャーや従業員に伝え、タイ語で定期的なトレーニングを実施するなどの措置により、発生しうる問題の予防と迅速な解決が可能になります。さらに、従業員が利用しやすい報告ルートや内部通報窓口・ホットラインの導入も必要です。

タイ国家汚職防止委員会(NACC)は、企業に対して、企業およびそのスタッフによる贈収賄を防止するために適切な内部統制対策を実施するようガイドラインを発表しています。[18] 包括的なコンプライアンス・プログラムがあるからといって、賄賂があった場合の責任が免除されるわけではありません。しかし、会社に関係する個人が賄賂に関与した場合、裁判所から緩和要因として考慮される可能性があります。[19]

コンプライアンス・プログラムを通して通知・告発があった場合、会社は様々な懸念に迅速かつ透明性をもって対処することが極めて重要です。効率的かつ効果的なプロセスを確保するために、会社は明確に定義された内部調査計画を持つことが推奨されます。この調査計画には、不正行為やコンプライアンス違反の軽微、かつ、重大な事件の両方が含まれ、調査員や調査範囲、手続き手順、予定スケジュール、外部の法律顧問を起用する必要性などの状況の概要が示されていることが必要です。

賄賂が発見された場合、企業への影響は賄賂の受領者により異なります。タイ法律上[20]、公務員に財物や利益を供与したり、供与を約束したり、供与を申し出たりする賄賂となる行為によって、当該公務員が職務に反する作為もしくは不作為または遅延するよう誘導する行為は違反となります。

汚職防止法が2015年に改正され、外国政府の公務員や公的国際機関の職員も含まれるようになりました。タイにおける贈収賄の罰則は、賄賂の性質と、贈収賄事件に関与する関連当局を管理する特定の法律によって左右されます。

さらに、国家機関への提案書提出を目的とした入札談合などの特定の行為は、犯罪行為とみなされます。[21]

結論

タイには数多くの有望な投資機会があり、その将来は明るいと思われます。しかし外国人投資家は、タイでビジネスを行う際に一般的な課題に留意することが不可欠です。特に上記のようにタイJVを通じて投資する場合には、これらの課題を事前に十分に把握し、積極的に対処することが、タイでの投資目標の実現に寄与します。

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[1] タイ投資委員会 (https://www.boi.go.th/upload/ejournal/2023/Vol33/Jan/index.html#p=1)

[2] タイ投資委員会 (https://www.boi.go.th/index.php?page=macroeconomics)

[3] タイ投資委員会 (https://www.boi.go.th/upload/ejournal/2023/Vol33/Jan/index.html#p=1)

[4] タイBOI、投資家囲い込み、移転、水素自動車への新インセンティブを発表 (https://www.boi.go.th/upload/content/PR106_2565.pdf)

[5]「外国人」とはタイ国籍を有していない自然人、タイ国内で登録されていない法人、および全資本の少なくとも50%が外国人によって所有されている法人 (FBA第4条)

[6] 国土省の典型的な実務を参考にすると、登録資本金の49%を外国企業が保有しているか、外国人株主の数が総株主数の半数以上である場合、外国企業とみなされるhttps://www.thaigov.go.th/news/contents/details/62246

[7] 投資促進法B.E.2520(1977)第27項

[8] 民商法典第69条

[9] 外国人事業法B.E.2542(1999年)第36項

[10] 歳入法の第3章、第4章、および第5章

[11] 民法および商法第582 条および労働保護法B.E.2541(1998)(LPA)第17条

[12] 民法・商法第583条、LPA第119条

[13] LPAの17条、17/1条、67条、118条。LPAに定義される「給与」の範囲については、慎重に検討する必要がある。

[14] 労使関係法 第20条、B.E.2518(1975)

[15] 23/1条LPA

[16] 外国人労働許可証の検討 基準に関する雇用省規則 B.E.2552

[17] PwC「タイ経済犯罪・詐欺調査2022」(https://www.pwc.com/th/en/consulting/forensic/assets/economic-crime-and-fraud-survey-2022.pdf)

[18] NACC「法人における贈賄行為防止のための内部統制措置に関するガイドライン(2017年版)」

[19] 汚職防止法改正第3版B.E.2558 (2015)

[20] タイ刑法第143 条および第144条、反汚職法B.E.2561(2018年)

[21] 政府入札違反法 B.E. 2542 (1999) の第5項